最賃引き上げの光と影:2025年度の動向と企業・労働者への影響

最低賃金は年々引き上げられており、2025年度も過去最高の上げ幅となる見込みです。この動きは労働者にとって喜ばしい反面、中小企業にとっては経営を圧迫する要因にもなり得ます。今回は、2025年度の最低賃金改定の動向と、賃金引き上げがもたらす影響について整理していきたいと思います。


2025年度の最低賃金、過去最高の引き上げへ

2025年度の地域別最低賃金改定について、厚生労働省の審議会で答申が取りまとめられました。この答申通りに引き上げが行われれば、全国加重平均は1,118円引き上げ額は63円となり、いずれも過去最高を更新します。引き上げ率は6.0%に達する見込みです。

最低賃金は各都道府県で決定されますが、ここ数年の傾向から、目安以上の水準で最終決定される可能性が高いでしょう。


都道府県別の最低賃金目安

都道府県別の引き上げ目安は、A、B、Cの3つのランクに分かれています。

ランク 都道府県 目安金額
Aランク 埼玉、千葉、東京、神奈川、愛知、大阪 63円
Bランク 北海道、宮城、福島、茨城、栃木、群馬、新潟、富山、石川、福井、山梨、長野、岐阜、静岡、三重、滋賀、京都、兵庫、奈良、和歌山、島根、岡山、広島、山口、徳島、香川、愛媛、福岡 63円
Cランク 青森、岩手、秋田、山形、鳥取、高知、佐賀、長崎、熊本、大分、宮崎、鹿児島、沖縄 64円

賃金引き上げの効果と課題

最低賃金の引き上げは毎年10月に実施されます。昨年度(2024年度)の引き上げ率が5.1%だった際、その効果が特に顕著に表れたのはパートタイム労働者でした。2024年10月のパートタイム労働者の現金給与総額は、前年同月比で6.62%増加しており、最低賃金引き上げが直接的に影響していることが分かります。

しかし、賃金が上がることは手放しで喜べることばかりではありません。次のようなデメリットも指摘されています。

所得の壁

パートタイムで働く人の多くは、扶養の範囲内で働きたいと考えています。時給が上がると、扶養を外れないように労働時間を減らす人が増える可能性があります。これは、すでに人手不足に悩む企業にとって、さらに状況を悪化させる要因になります。

可処分所得の上昇率

賃金が上がっても、その分がすべて手取りとして増えるわけではありません。賃金上昇に伴って所得税や社会保険料などの負担も増えるため、自由に使えるお金(可処分所得)は、賃金の増加率ほどには伸びないのが現状です。


まとめ

最低賃金は、2021年度の28円(3.10%)から、2025年度には目安として63円(6.0%)と、急激なペースで引き上げが続いています。

これに呼応するように、全国の倒産件数も増加傾向にあります。倒産の理由が人件費の高騰だけではないにせよ、賃金引き上げが中小企業の収益や人材確保に大きな影響を与えていることは間違いありません。

最近の政府の発言や報道を見ていると賃上げを大きく取り上げていますが、賃上げ以外の対策を講じることが不可欠な状況だと言えるでしょう。

最低賃金と実質賃金(2024年Ver)

最低賃金と実質賃金(2024年Ver)

最低賃金と実質賃金(2024年Ver)

厚生労働省」HP

ゼロコスト採用コンサルタント 渡瀬 暢也

ゼロコスト採用コンサルタント 渡瀬 暢也

1972年・大阪府生まれ、日本大学経済学部卒業。
「ハローワーク活用7つの鉄則」で中小建設業の採用対策と社員が辞めない労務管理をサポートする社労士。求人営業を約10年、人材派遣を10年以上経験。2009年に職業訓練(建築CAD科)事業を立ち上げ運営も担当、ハローワーク活用の就職支援で約1,000名のCAD技術者を輩出。卒業生の短期離職で、就職支援の限界を痛感。労務管理改善を目指し社労士資格取得。中小建設業の採用難対策から労務管理を行う。建設業の採用をサポートし『20代の採用は10年以上振り』と感謝の声を頂く。若者離れの業界に採用戦略で風穴を開け、従業員の未来ある環境を真剣にサポートしている。

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