来る7月20日、参議院選挙が投開票されます。今回は政権選択選挙の様相を呈しており、半数の125議席に対し522名が立候補するという、例年以上に厳しい争いが予想されます。
今回は、社会保険労務士(以下、社労士)の視点から、主要政党の政策を深掘りし、その実効性や影響について考察していきたいと思います。
各党の主要政策をチェック!
まずは、各党が掲げる主要な政策を見ていきましょう。
【自由民主党】
- 豊かな暮らしの実現:強力な物価対策と持続的な賃上げを目指す。
- 2030年度までに実質1%、名目3%の賃金上昇率を達成し、賃金が約100万円増加することを目指す。
【立憲民主党】
- 失われた30年に終止符を打ち、豊かな日本を復活
- 人手不足解消:中小企業の社会保険料事業主負担の軽減、奨学金の代理返還支援。
- 持続的賃上げ:企業利益からの労働分配を増やす。
- 最低賃金:中小企業支援を前提に、全国で早期に1,500円以上に引き上げ。
【日本維新の会】
- 社会保険料の改革がすべてを変える
- 社会保険料改革:年6万円の負担減。
- 医療費窓口負担:所得に応じた公平な窓口負担改革。
【公明党】
- 物価高の克服:
- 所得税減税(控除のさらなる引き上げ)
- 生活応援給付で還元
- 現役世代の所得増:中小企業の稼ぐ力を向上させ、働く人の給料を増やす。
【国民民主党】
- みんなの手取りを増やす
- 所得税、住民税減税
- 消費税減税
- 現役世代の社会保険料軽減
- 就職氷河期世代への伴走支援
社労士が斬る!各党政策への本音
ここからは、社労士として各党の政策に対する私見を述べさせていただきます。
1. 各党が掲げる「賃上げ」について
各党がこぞって「賃上げ」を政策の柱に掲げていることは評価できます。しかし、その実効性には疑問符がつく部分もあります。
- 最低賃金の影響は限定的?
- このブログでも度々取り上げていますが、最低賃金の引き上げはパートタイム労働者には一定の効果をもたらします。しかし、一般の正社員への影響は限定的と言わざるを得ません。
- 「春闘」と中小企業の現実
- ニュースでは「春闘で〇%達成!」といった賃上げ報道が目立ちますが、これは主に大企業に焦点を当てたものです。日本の企業構成を考えると、大企業はわずか0.3%に過ぎず、残りの99.7%が中小企業です。従業員数で見ても、大企業が3割、中小企業が7割を占めています。
- この現状を鑑みると、中小企業の賃金対策なくして、日本全体の賃上げを底上げすることは非常に難しいのが現実です。
- 政府は中小企業の価格転嫁を後押ししていますが、自由競争の原理が働く市場において、安易な価格転嫁はより安価なサービスを提供する企業に顧客を奪われるリスクを伴います。結果として、多くの中小企業が価格転嫁に踏み切れない状況にあります。
2. 各党が掲げる「減税」について
「所得税減税」を掲げる政党も複数ありますが、正直なところ、その効果は限定的であると考えます。
- 所得税減税の効果が薄い理由
- 現在の税制では、すでに様々な所得控除が設定されています。そのため、給与明細をご覧いただくとお分かりいただけると思いますが、所得税の負担額は、想像よりも多くないと感じる方もいらっしゃるのではないでしょうか。
- どこにメスを入れるべきか?
- 例えば、正社員の平均年収530万円で簡易シミュレーションをしてみましょう。
所得税:約16万円
住民税:約27万円
社会保険料:約76万円 - この数字を見ると、個人の手取りに大きな影響を与えているのは、所得税よりも社会保険料であることが一目瞭然です。国民民主党や日本維新の会が社会保険料の軽減を掲げているのは、まさにこの点に注目していると言えるでしょう。
- 例えば、正社員の平均年収530万円で簡易シミュレーションをしてみましょう。
まとめ:真に「手取りを増やす」ために
今回の参議院選挙における各党の政策を見てきましたが、社労士の視点から見ると、「賃上げ」の実効性を高めるためには中小企業への具体的な支援策が不可欠であり、「手取りを増やす」ためには、所得税や住民税よりも社会保険料へのアプローチがより大きな効果をもたらす可能性が高いと個人的には考えています。
もちろん、これはあくまで社労士としての個人的な意見であり、各政策には様々な側面があることをご理解ください。
有権者の皆様には、各党の政策を多角的に検証し、ご自身の暮らしや日本の未来にとって何が最善かを判断して投票に臨んでいただきたいと思います。
最低賃金と実質賃金(2024年Ver)
総務省「第27回 参議院議員通常選挙」HP
コメント
COMMENT