大阪を拠点とする社会保険労務士なので、
大阪の現状について書いていきたいと思います。
賃上げ労働者心理との乖離
春闘も始まり、
政府から経団連への要請などもあり
賃上げムードが漂っています。
例えば、グローバル企業である
ユニクロは最大40%の賃上げを
打ち出しを発表しました。
なので、街頭アンケートの労働者からは
「40%とは言わないが20%程度は上げて欲しい」
といった返答があったりします。
実際に政府の要請は
物価上昇率を上回る賃上げ要請であり、
ニッセイ基礎研究所の発表によると
2022年の消費者物価上昇は前年比3%であり、
政府の要請はこの3%程度の
上昇率以上の賃上げ要請で、
労働者が期待する20%程度の賃上げとは
実際には乖離している。
大阪の現状
今年の賃上げが
どの程度の規模で実施されるかは
企業によって異なるところではあります。
しかし、ここ数年の賃金上昇と
労働時間について大阪労働局発表の
資料を確認してみると、
令和4年12月度の求人者の
募集賃金下限平均は223,176円であり、
比較可能な令和2年12月度の求人者の
募集賃金下限平均は216,349円であり
2年間で約3.2%上昇しています。
さらに、賃金だけではなく
労働時間にも着目してみると、
大阪府下の一般労働者年間総労働時間は
平成29年に2,011時間であったのに対し、
令和元年は1,963時間と2年間で約2.4%減少しています。
大阪の実際の賃金上昇率
発表資料の年度が異なる、
労働者の実質賃金ではなく
募集賃金下限平均なので
単純比較することは難しいですが、
同じ2年間での上昇率と減少率なので、
これを強引に時間単価で計算してみると
216,349円(月給)×12カ月÷2,011時間=
1,291円、223,176円(月給)×12カ月÷1,963時間=1,364円となる。
月給制で総労働時間に対して
金額の変動がない(みなし残業手当などで残業分の上乗せ給与が発生しない)
と考える約5.7%上昇していることになる。
ちょっと強引ではあるが、
働き方改革の成果もあって
コロナ禍であっても
総労働時間と月給の観点から考えると
2年間で実質賃金は5.7%上昇しており、
これは企業側から見れば
物価上昇率以上の賃上げに
相当する結果である。
≪注意≫決して企業側に加担している訳ではありません!
大阪の年次有給休暇の取得率
前述の通り、総労働時間を含めると
2年間で約5.7%の上昇となるのですが、
更に同資料に掲載がある
有給休暇の取得率は
大阪府下において
2年間で48.6%から54.6%と
6%上昇しております。
そして、令和元年、大阪府下1人あたりの
平均総取得日数は10.17日と
発表されておりますので、
2年前と比較すると
約0.6日増加したことになります。
有給休暇の取得日数増加分
0.6日をフルタイム勤務8時間、
時間単価1,364円で計算すると
約6,547円となり、
1年間で時給計算すると
3.4円となります。
有給休暇の取得増加分を
前述の1,364円に加算して計算すると
2年間で約5.9%実質賃金は上昇したことになります。
約6%の実質賃金を実感できない
多くの労働者はこの2年間で
約6%の実質賃金上昇を
全く感じることはできていないのではないでしょうか?
この間に健康保険と雇用保険の
料率変更はありませんでしたが、
介護保険料及び厚生年金保険料については
若干ではありますが料率が上がっております。
また、総労働時間減少と有給休暇取得率上昇は
結果としてプライベート時間が増加し、
知らず知らずのうちにプライベートでの
出費が増えることにも繋がります。
まとめ
働き方改革の成果は、
労働局の発表を確認すると
着実に成果に結びついていることが
確認できます。
2年間で約6%の実施賃金上昇率は
年間で3%と、結果として
現在の物価上昇率と同じだけの
効果が発生しているのです。
そして、皆さんがお勤めの会社が
今年度にどれ位の賃上げの
結果となるかはわかりません。
しかし、中小企業にとっては
この数パーセントが捻出できない
可能性があるのも事実です。
労働者の賃金増加は
社会保険料の会社負担分増加にも直結します。
また、給与額の20%増加は、
企業にとっては保険料負担分なども含めると
25%程度の増加になります。
業務の効率化や売上増加なくして
その原資が確保できないことも是非考えてみて下さい。
最後までお読み頂きありがとうございました。
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