現在放映中の企業人事部が舞台のドラマをきっかけに、「退職の自由」について改めて考えてみました。労働契約は、働く上で非常に重要な取り決めです。特に退職に関しては、契約期間の有無によって大きく扱いが異なります。今回は、この「退職の自由」について、分かりやすく解説していきます。
期間の定めのない労働者の場合:原則いつでも退職可能
期間の定めのない雇用契約を結んでいる場合、退職の自由は民法第六百二十七条によって保障されています。
民法第六百二十七条
当事者が雇用の期間を定めなかったときは、各当事者は、いつでも解約の申入れをすることができる。この場合において、雇用は、解約の申入れの日から二週間を経過することによって終了する。
つまり、原則として労働者はいつでも会社に退職の意思を伝えられ、申し入れから2週間後には雇用契約が終了します。
ただし、同条の第二項、第三項には、期間によって報酬を定めている場合の特例が規定されているため、注意が必要です。
期間の定めのある労働者の場合:原則として契約期間満了まで勤務
一方、期間の定めのある雇用契約の場合、民法では以下のようになっています。
民法第六百二十六条
雇用の期間が五年を超え、又はその終期が不確定であるときは、当事者の一方は、五年を経過した後、いつでも契約の解除をすることができる。
民法第六百二十八条
当事者が雇用の期間を定めた場合であっても、やむを得ない事由があるときは、各当事者は、直ちに契約の解除をすることができる。この場合において、その事由が当事者の一方の過失によって生じたものであるときは、相手方に対して損害賠償の責任を負う。
原則として、契約期間が満了するまでは退職することができません。ただし、契約期間が5年を超える場合や、やむを得ない事由がある場合には、期間途中でも退職が認められます。
ここがポイント!労働基準法の特例
ここで重要なのが、労働基準法という法律の存在です。労働基準法は、労働者を保護するための特別法であり、民法よりも優先されます。
労働基準法第百三十七条
民法第六百二十八条の規定にかかわらず、当該労働契約の期間の初日から一年を経過した日以後においては、その使用者に申し出ることにより、いつでも退職することができる。
この規定により、契約期間に定めのある労働者であっても、雇用契約の初日から1年を経過すれば、会社に退職の意思を伝えることで退職が可能になります。
ただし、契約期間が1年以内の場合は、原則通り民法の規定が適用され、やむを得ない事由がない限り、期間満了まで退職することが難しいケースがあるため注意が必要です。
就業規則との関係:合理的な範囲内での定めは有効
多くの企業では、就業規則に退職に関する事項が定められています。例えば、「退職する日の1ヶ月以上前に申し出ること」といった規定です。
一般的に、民法の退職に関する規定は任意規定と解釈されており、労働契約や就業規則で民法と異なる定めをした場合、その定めが優先されます。
しかし、就業規則の規定が社会通念に照らして**合理的ではない場合(例えば、3ヶ月前に申し出なければならないなど、期間が極端に長い場合)**には、民法の規定が優先され、その規定が無効となる可能性もあります。
まとめ
「退職の自由」は、雇用契約の期間の定めによって大きく異なります。
- 期間の定めのない労働者: 原則としていつでも退職可能(申し入れから2週間後)。
- 期間の定めのある労働者:
- 原則として契約期間満了まで勤務。
- 契約期間が1年を超えている場合は、1年経過後であれば退職可能(労働基準法)。
- 契約期間が5年を超える場合、5年経過後は退職可能(民法)。
- やむを得ない事由があれば、期間に関わらず即時退職可能(民法)。
- 就業規則: 合理的な範囲内での退職に関する定めは有効。
今回のドラマをきっかけに、ご自身の雇用契約について改めて確認してみるのも良いかもしれません。もし不明な点があれば、専門家である社労士に相談することをおすすめします。
転職を題材としたドラマ
厚生労働省「退職の申し出」資料
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