有給休暇の賃金算定方法はどう変わる?

厚生労働省の労働政策審議会(労働条件分科会)では、労働基準法の改正に向けた検討が進んでいます。
今回は、その中でも企業実務に直結する 「有給休暇の賃金算定方法」 について、現行制度の問題点や審議会での議論、企業が今後検討すべきポイントを整理します。


1.現行法制:有給休暇の賃金は3つの方法で算定

年次有給休暇取得時の賃金は、現行制度では以下の3つから選択できます。

①平均賃金(労働基準法第12条)

  • 算定基準日以前3カ月間の賃金総額 ÷ 総日数

  • 基本給だけでなく、残業代・諸手当を含む

②通常の賃金

  • 所定労働時間働いた場合に支払われる賃金
    (時給制なら「時給×所定労働時間」)

③標準報酬月額の30分の1

  • 健康保険の標準報酬月額をベースに計算

  • 労使協定の締結が必須


2.現行制度の課題:方法次第で賃金が大きく減るケースがある

特に 時給制のパート・アルバイト労働者 では、計算方法によって有給休暇取得時の賃金が大きく変わることが問題とされています。

▼具体例(時給1,500円、週4日×4時間労働の場合)

計算方法 日額
①平均賃金 3,200円
②通常の賃金 6,000円
③標準報酬月額(大阪 R7) 3,267円

通常の賃金(②)に比べ、①・③を採用すると 4割〜5割程度低い金額 になることもあります。

本来は「休んでも賃金が減らない」制度のはずが、雇用形態によって不利益が生じやすいことが現行制度の大きな課題です。


3.審議会での議論:原則②「通常の賃金」へ一本化の方向

有給休暇制度は、もともと 月給制・正社員を前提に設計 されました。
そのため、時給制・非正規雇用が増えた現在の働き方とかみ合わなくなっています。

審議会では、こうした実態を踏まえ、

「原則として②通常の賃金で支払う」方向で見直すべきではないか

という議論が進んでいます。

①と③を残す必要性についても議論されていますが、現状では利用場面が限定的で、明確な合理性は見いだしにくいという状況です。


4.企業が今後検討すべきポイント

現在、①または③を採用している企業は要注意

有給休暇取得時の賃金が低くなる計算方法を採用している場合、
同一労働同一賃金の観点からも不合理な待遇と評価される可能性 があります。

「通常の賃金」への統一を検討すべき

制度改正の方向性を踏まえても、
所定労働時間どおり働いた場合と同額を支払う方式(②) が最も実態に合っています。

制度改正を待たずに、早期の見直しを

実務上のトラブル(パートからの苦情、同一労働同一賃金訴訟など)を防ぐためにも、制度改正前から②方式への変更を検討することが望ましいといえます。

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厚生労働省「労働基準関係法制研究会報告書」資料

ゼロコスト採用コンサルタント 渡瀬 暢也

ゼロコスト採用コンサルタント 渡瀬 暢也

1972年・大阪府生まれ、日本大学経済学部卒業。
「ハローワーク活用7つの鉄則」で中小建設業の採用対策と社員が辞めない労務管理をサポートする社労士。求人営業を約10年、人材派遣を10年以上経験。2009年に職業訓練(建築CAD科)事業を立ち上げ運営も担当、ハローワーク活用の就職支援で約1,000名のCAD技術者を輩出。卒業生の短期離職で、就職支援の限界を痛感。労務管理改善を目指し社労士資格取得。中小建設業の採用難対策から労務管理を行う。建設業の採用をサポートし『20代の採用は10年以上振り』と感謝の声を頂く。若者離れの業界に採用戦略で風穴を開け、従業員の未来ある環境を真剣にサポートしている。

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