中小企業では、人事・労務を専任で置くことが難しいケースも多く、
悪意はなくても法令違反に該当してしまう賃金トラブルが少なくありません。
ここでは、特に発生しやすい事例を紹介します。
事例①「賞与だから賃金ではない」と思い込んでいた
よくあるケース
-
「業績次第だから賃金ではない」
-
「あくまで寸志」
しかし、就業規則や労働契約書に
支給条件・支給時期が明記されている場合、賞与は賃金に該当します。
その結果、
-
不支給にした理由を説明できない
-
一方的な減額が問題になる
といったトラブルに発展します。
👉 「名称」ではなく「実態」で判断される点がポイントです。
事例② 給与振込手数料を従業員負担にしていた
銀行振込が当たり前になったことで、
振込手数料を天引きしている企業も少なくありません。
しかし、賃金は「全額払い」が原則です。
-
会社都合の振込手数料
-
デジタル払いの換金手数料
これらを労働者に負担させると、
賃金全額払いの原則違反となる可能性があります。
事例③ 現物支給が「賃金の代わり」になっていた
-
制服代を給与から差し引いている
-
社宅費を一方的に控除している
-
食事提供を賃金の一部として扱っている
これらは、労使協定がなければNGです。
「福利厚生のつもり」が、
実質的な賃金カットと判断されることもあります。
事例④ デジタル払いを“全員強制”してしまった
新制度として注目されているデジタル払いですが、
-
現金払いの選択肢がない
-
事実上、同意せざるを得ない雰囲気
このような運用は、通貨払いの原則違反となります。
特に中小企業では、
「一括導入」「全員同じ運用」にしがちなので要注意です。
事例⑤ 残業代の計算基礎に手当を入れていなかった
中小企業で非常に多いのがこのケースです。
-
皆勤手当
-
資格手当
-
役職手当
これらは原則として
割増賃金の算定基礎に含める必要があります。
「基本給だけで計算していた」
→ 未払い残業代として遡及請求されるリスクがあります。
事例⑥ 退職金の支払時期が曖昧だった
-
「落ち着いたら支払う」
-
「決算後に支給する予定」
こうした曖昧な説明は、
退職後トラブルの典型例です。
退職金も賃金である以上、
-
支払時期
-
支払方法
-
算定基準
は、事前に明確化しておく必要があります。
まとめ:トラブルの原因は「制度」より「運用」
中小企業の賃金トラブルは、
-
知識不足
-
規程と実態のズレ
-
説明不足
この3つが重なって発生します。
「昔からこうしている」は、
もはや通用しない時代です。
一度トラブルになると、
-
是正勧告
-
未払い賃金の遡及支払い
-
従業員との信頼低下
と、企業へのダメージは小さくありません。
定期的な規程見直しと運用チェックが、最大の予防策です。
賃金支払いにおける企業側の実務上の注意点


コメント
COMMENT