労働者の権利にはどういったものがあるかご存じですか?
また、権利があるということは義務も発生します。
本日は、その辺について書いていきたいと思います。
3月も後半に入り、今年も新卒社員受入の季節が近づいてきました
。私も新入社員研修に向けて急ピッチで内容を調整している段階です。
その中で来年度の新入社員向け研修資料の中で労働者の義務と権利についてまとめていました
。今回はそんな労働者の義務と権利について記載していきたいと思います。
労働者の義務
労働基準法第2条では「労働者及び使用者は、労働協約、
就業規則及び労働契約を遵守し、
誠実に各々その義務を履行しなければならない。」
とされています。
従って、使用者・労働者双方共に就業規則・労働協約・
労働契約の内容に義務を負っているわけです。
もちろん、各会社によって就業規則・労働協約・労働契約の
内容は異なる部分はあります。
しかし、代表的な内容を記載していきたいと思います。
誠実労働義務
労働者には労働契約に基づき労務を提供する義務があります。
単純に出勤すれば良いというわけではありません。
労働契約で締結した内容の労働を行うには、
就業規則など職場のルールは守らなければなりません。
また、徹夜で遊んだ結果、仕事に身が入らず、
居眠りばかりしていたのでは、労務を提供したと認められない場合もあります。
労務の提供は、労働契約で締結した内容に従ったものである必要があります。
例えば、労働契約上では「外勤営業」なのに、
外勤を拒否していくら内勤をやっていても、
労働契約上の労務を提供したとはいえません。
企業秩序維持義務
労働者にとって、上司の指示・命令は
必ずしも納得のいくものとは限りません。
例えば、突然「今日は残業してくれ」と指示されることもあります。
上司の命令には、時として納得のいかない場合であっても、従う義務があります。
なぜなら、上司の命令に従わないことが会社内で蔓延した場合、
その職場の秩序は維持できなくなってしまうからです。
判例でも、会社は労働者に、
その存立を維持し目的たる事業を円滑に運営するため、
企業秩序に服することを求めることができるとされています。
ただし、上司の指示・命令が違法又は不当な場合はその限りではありません。
守秘義務
会社の考え方や上司の指示・命令に個人的には
納得できないという「思い」を抱いていたしても、
それらが違法又は不当でない限りは、
誠実に労会社の考え方や上司の指示命令に従って
労務を提供することが必要であることは既に説明しました。
また、その「思い」を外部にみだりに公開することも
基本的にはNGとなります。
ましてやそれが会社の経営上のノウハウや
社内の人事情報・顧客の情報など
会社の機密に属する事項である場合には完全にNGです。
職場の秘密や顧客の個人情報等を
SNSに書き込む行為は、
悪意はなく軽い気持ちであったとしても、
その結果、会社の社会的な信用を失うものであり、
「守秘義務」に反する許されない行為となります。
SNSへの書き込みを含め勤務時間外の私的な行為であっても、
その内容や程度によっては会社による懲戒処分の対象となります。
兼業禁止義務
勤務終了後にアルバイトをすることは、
労働者にも職業選択の自由(憲法22条)があり、
一律に禁止されるものではありません。
しかし、多くの会社の就業規則は、
会社が許可した場合に兼業が認められるという
「兼業許可制」を定めています。
「兼業許可制」を定めること自体は一
律に無効ではありませんが、
実際に、兼業許可を求めた労働者に対して、
会社が、許可しなかった場合、
その理由によっては、
会社が権利を濫用したものとして
無効と判断される場合もあれば、
本来職務の遂行に悪影響があるものとして
有効と判断される場合もあります。
労働者の権利
義務と権利は表裏一体ですので、
労働者が義務を果たした場合に様々な権利が発生します。
また、義務は放棄できませんが、
権利は放棄することができます。
賃金を受け取る権利
労働者は、誠実に労働を実施した
(誠実労働義務を果たした)わけですから、
それに対して使用者から賃金を受け取る権利が発生します。
使用者は賃金支払いの5原則
(直接、本人に、通過で、月1回以上、定期的に)
に則って労働者に賃金を支払う必要があります。
支払う賃金は基本給だけでは無く、
各種手当てや割増賃金なども含まれます。
休憩・休暇の権利
使用者は、無制限に労働者を
使用できるわけではありません。
労働者の健康にも配慮するひつようがあり、
労働時間が一定以上の場合は規定
(6時間を超える場合45分、8時間を超える場合1時間)
の休憩時間を与えなければなりません。
また、毎日出勤させれば
労働者の疲労は蓄積される一方になりますので、
法定休日を定めて、労働者に労働をさせない日、
いわゆる休日を設けなければなりません。
また、それ以外にも所定の休日以外に
給与の支払いを受けて休める
年次有給休暇を取得する権利も与えられます。
退職する権利
雇用期間の定めがない労働者の場合、
2週間の予告期間をおけば
いつでも退職することができるとされています。
労働基準法においてこの民法と異なる規定はなく、
労働者は民法の規定に従って
自由に退職する権利があるとされています。
しかし、多くの企業は就業規則で
退職に関するルールを定めていることも多く、
「退職する場合は退職予定日の1ヶ月前までに申し出ること」
となっている場合はそれに従う必要があります。
まとめ
本来、使用者と労働者は対等であるが、
どうしても労働者の方が弱い立場になることが多いことから、
前述の内容以外にも「団結権」「団体交渉権」「団体行動権」
などが労働者には認められており、
労働者が一致団結して使用者に立ち向かう
権利が法律上認められています。
そして、労働者にも使用者にも言えることですが、
義務と権利は表裏一体であり、
義務を果たせば権利が発生することになります。
例えば、労働者が誠実労働義務を果たせば、
労働者に賃金を受け取る権利が発生すると同時に、
使用者には賃金を支払う義務が発生します。
このように権利と義務は表裏一体ですので、
権利を主張するだけでは会社は存続できません。
その前提条件として義務を果たす必要があることにも留意が必要です。
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