早出残業の取扱いについて

早出残業とは?

そもそも労働時間とは

使用者の指揮命令下に

置かれている時間のことで、

明示または黙示の指示により

労働者が業務に従事する時間は

すべて労働時間となります。

したがって、就業規則への記載、

タイムカードの打刻、

出勤簿への記載などが

勤務時間となるわけではありません。

つまり、法律上では早出残業という

考え方は存在しないことになります。

では、一般的に早出残業というのは

就業規則等で定めた始業時間前に

使用者の指揮命令下に置かれる

時間ということになります。

早出残業の割増賃金

また、早出残業の計算方法としては

早出分を時間外労働とするのではなく、

早出出勤の出勤時間を始業時間とし、

退勤時に1日8時間超過分の

労働時間を時間外労働として

計算することになります。

したがって、早出残業を別枠で

計算する必要はありませんので、

通常の時間外労働として

25%の割増率(1ヶ月60時間超は50%)が

適用されることになります。

早出残業となるケース

具体例を考える前に基本的な考え方は

労働者が使用者の指揮命令下に

あったかなかったかになります。

指揮命令下に着目して

早出残業となるケースを考えてみます。

上司からの命令

就業時間が9:00~18:00(休憩1時間)の

会社において、仕事の繁忙期等で

上司の命令で8:30に出勤した場合は

指揮命令下にあると判断されるので、

労働時間となります。

制服・作業着への着替え

制服や作業着の着用が義務づけられている場合、

始業時間間の制服・作業着への着替えは

指揮命令下での着替えとなるので、

労働時間となります。

しかし、制服・作業着を着用して

通勤を認めている場合は

指揮命令下とは言えず、

労働時間とならないケースがあります。

朝礼・会議への参加

就業時間が9:00~18:00(休憩1時間)の

会社において、朝礼や会議を8:50から開始し、

その出席が義務付けられている場合は、

指揮命令下にあると判断されるので、

労働時間となります。

しかし、自由参加となっている場合には

別途上司などから参加要請や参加指示が

ない限りは指揮命令下にあるとは言えず、

労働時間とはなりません。

他にも、建設系企業で始業前に

ラジオ体操を行っているケースがあります。

これも同様に義務づけられていれば

労働時間に該当し、

自由参加であれば労働時間に該当しません。

※注意!自由参加であっても

上司からの参加圧力があれば、

労働時間となることがあります。

早出残業とならないケース

では、早く出勤すれば全てが

早出残業として労働時間になるかというと

そういうわけではありません。

遅刻予防で自主的に出勤

筆者の経験上になりますが、

勤務先から遠方に住まれている方ほど

始業時間より早い時間に

就業場所に来られているケースが

多いように思われます。

理由をお聞きすると、

電車の遅延が発生すると

始業時間を超えてしまう確率が高いので

早く出勤されるそうです。

こういったケースでは、

指揮命令下にあるとは言えず、

労働時間とはなりません。

ラッシュを避ける

通勤経路によっては、

朝の通勤ラッシュが激しいケースも

存在すると思います。

筆者にもそういった時期がありましたが、

通勤ラッシュを避けるために

始業時間前に出勤される方が

いらっしゃいます。

こういったケースも指揮命令下に

あるとは言えず労働時間とはなりません。

まとめ

いわゆる早出残業は法律上に

明確な規定はありません。

ポイントは労働者の

指揮命令下にあったかなかったかです。

そして、早出残業は通常残業と比較して

ラッシュを避ける遅刻予防など

自主的な出勤の場合には労働時間に

算入されません。

一方、通常残業は労働者が残っているだけでも、

黙示の指示があったとみなされる場合は

労働時間とみなされます

皆さんの会社でも適切な労働時間管理を

行っているかチェックしてみて下さい。

 

労働者の時間管理

労働者の時間管理

労働者の時間管理

 



厚生労働省「しっかりマスター労働基準法 割増賃金編」

ゼロコスト採用コンサルタント 渡瀬 暢也

ゼロコスト採用コンサルタント 渡瀬 暢也

1972年・大阪府生まれ、日本大学経済学部卒業。
「ハローワーク活用7つの鉄則」で中小建設業の採用対策と社員が辞めない労務管理をサポートする社労士。求人営業を約10年、人材派遣を10年以上経験。2009年に職業訓練(建築CAD科)事業を立ち上げ運営も担当、ハローワーク活用の就職支援で約1,000名のCAD技術者を輩出。卒業生の短期離職で、就職支援の限界を痛感。労務管理改善を目指し社労士資格取得。中小建設業の採用難対策から労務管理を行う。建設業の採用をサポートし『20代の採用は10年以上振り』と感謝の声を頂く。若者離れの業界に採用戦略で風穴を開け、従業員の未来ある環境を真剣にサポートしている。

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