退職代行を使用して退職する人が
増加傾向にあります。
特にZ世代と呼ばれる若者は
タイパ(タイムパフォーマンス)、
日本語で言えば時間対効果を
大切にする人が多く
退職代行を使用するケースが多いです。
使者と代理人
まず、退職代行を理解するためには
民法に定める使者と代理人を
理解しておく必要があります。
最初に使者とは本人が既に決定している
意思を相手方に表示、
または本人の意思表示を
相手方に伝達する人のことです。
したがって、本人の意思を伝えるだけなので
それ以外の意思決定や法律行為などは
行うことができません。
次に代理人とは本人に代わって
事を処理する人のことです。
また、本人のために第三者に対して
意思表示を行い、または第三者から
意思表示を受けることによって、
その法律効果が直接本人について
生じることになります。
退職代行の類型
一般的に一言で退職代行と言っても
大きく3つのケースに分類されます。
一般企業による退職代行
まず、一般企業が退職代行を
行っているケースです。
このケースは前述の使者に
該当することになります。
つまり、退職の意思を相手方である企業に
伝達することになります。
したがって、有給休暇取得の交渉や
退職者の業務引継に関する事項を
話したとしても回答を得ることは
ほとんどありません。
例えば、事前に有給休暇や業務引継について
退職者本人が意思決定をしており、
それを使者として代行業者が伝達することは
可能になります。
しかし、このケースでも日程の調整など
具体的な交渉は出来ないことになります。
弁護士による退職代行
次に、弁護士が退職代行を
行っているケースです。
このケースは前述の代理人に
相当するケースになります。
したがって、使者とは異なり
有給休暇の交渉、業務引継ぎ、
退職日の調整、退職金の交渉など
代理権の範囲内で企業と交渉することが
可能になります。
つまり、本人を代理して交渉するので
企業側にとっても話は通じやすい面があるのは
否定できません。
労働組合による退職代行
最後に労働組合による
退職代行を行うケースです。
このケースは使者でも代理人でもなく
労働組合の組合員の退職について
団体交渉権を持って交渉が行われます。
そして、この団体交渉権は
憲法28条にも定められている
労働者を保護する権利のひとつです。
したがって、企業側が断ると
不当労働行為と認定されるケースもあります。
また、団体交渉権という名前の通り
退職に関する交渉を行いますので、
使者とはことなり様々な交渉を
することが可能です。
退職代行の注意点
まず、企業として退職代行を
使用された時に気になることは
退職希望日、退職慰留、有給休暇、業務引継
といったことではないでしょうか?
退職希望日
最初に退職希望日ですが
正社員の場合であれば
特に就業規則に定めがなければ
2週間前までの申し出で成立します。
しかし、多くの企業は就業規則で
1か月前の申し出を設定していますので、
その場合は1か月後の退職予定日となります。
退職慰留
次に退職慰留についてですが、
これは基本的に無理だと考えるべきです。
退職者が業者を使用して申し出るほど
退職の意思が強いのですから
慰留は不可能と考えるべきです。
ただし、その意思確認のために
退職届を提出させることは
行っておいた方がよいと思います。
業務引継・有給休暇
最後に業務引継と有給休暇を
同時に説明したいと思います。
業務引継を行うために
有給休暇取得の日程を
時季指定権で変更したいと
考える方も多いと思います。
しかし、退職日が2週間後に設定されており、
有給休暇の残日数が
10日間だとすると、
既に他の日に振り返ることはできないので
時季指定権は使用できないことになります。
つまり、時季指定権による
業務引継日程の創出は難しくなります。
また、有給休暇の残日数が少なく
退職までの期間に時季指定権が
使用可能なケースにおいても、
そもそも退職者に出勤意思がなければ
無理矢理出勤させることはできません。
まとめ
退職代行を使用するケースは
増加しています。
そして、企業として打てる方策は
あまり多くないのも前述の通りになります。
したがって、防衛策としてお勧めできることは
就業規則の作成と見直しです。
就業規則に退職に関するルールを
明記しておくことなどで
最低限の防衛をすることを
検討してみて下さい。
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