女性労働者の推移はM字カーブで
説明されることが多いです。
今回はそのM字カーブの説明から、
現在の女性労働者について書いていきたいと思います。
M字カーブ
日本における女性の労働率を説明するときに
M字カーブと言う言葉がよく使用されます。
これは私が社労士試験を勉強していた頃にも
日本的労働率の特徴として書かれて内容でもあります。
では、M字カーブとはどういったものかというと、
女性の労働率は、結婚・出産期に当たる年代に
労働率が一旦低下し、
育児が落ち着いた時期に再び上昇するということから、
アルファベットのMの形状に似ていることから名づけられました。
女性労働率の推移
このM字カーブについては
昭和56年においては
25~29歳、30~34歳を底とする
M字カーブを描いているのですが、
年数が経つごとにM字の底の部分が浅くなます。
そして底となる年齢も右方向(高年齢化)に移動している。
実際に、平成13年においては30~34歳が底となり、
昭和56年と比較すると底は浅くなっている上に
、底となる年齢層も高くなっている。
それが、令和3年の発表においては、
底となる年齢層は35~39歳の年齢層へと移行し、
底となる労働率についても
昭和56年/48.9%
平成13年/58.8%
令和3年/77.7%
と確実に底は浅くなっており、
もはやM字とは言えないような形状へと変化しています。
下図は内閣府男女共同参画局「女性の年齢階級別労働力率(M字カーブ)の推移」
働くことへの意識の変化
内閣府男女共同参画局のHPには
「女性が職業を持つことに対する意識の変化」
について記載があり、
「子供ができても、ずっと職業を続ける方がよい」
の割合は平成4年(1992年)には
女性/26.3%
男性/19.8%
であったのに対して
令和元年(2019年)では
女性/63.7%
男性/58.0%
と約20年の間に2倍以上の方が
出産後も仕事を続けることに肯定的な意見へと変化している。
時代背景
いわゆる高度成長期と言われた
1950年代~1970年代にかけて
日本経済は年平均で10%以上の成長を続けてきました。
その中でも1965年~1970年は
いざなぎ景気とも言われ
戦後最長の好景気でもあり、
人々の暮らしは豊かになり、
一家の大黒柱である父親の収入で
世帯全体の支出を賄うことが可能でした。
その後、景気変動はありましたが
女性の就業感を大きく左右するような出来事は無く、
1980年代からいわゆるバブル経済の時期を迎えます。
そして、1990年代前半のバブル経済が崩壊するまで、
株価上昇、不動産価格上昇などの恩恵を受け、
個人資産も増大し社会全体が今までにない好景気を実感できる時期でした。
このバブル経済崩壊後に可処分所得は低下し、
2000年代から全年齢層において低下します。
2010年代以降に39歳以下および65歳以上において
若干の増加はありますが、
働き盛りの世代であり、
子育て真最中である40~64歳の年齢層においては
2010年代にも低下を続けます。
女性労働率意識変化の背景
では、この約20年間の間にどうして出産後の女性労働者について
意識の変化が大きくあったかというと、
私見ではありますが可処分所得
(簡単に言うと給与の総支給額から税金や社会保険料を差し引いた金額)
の低下と消費税導入が大きな要因と思われます。
1990年代までは社会保険料の増加を上回る
給与所得の増加があったのですが、
バブル経済崩壊後の日本では
給与所得が横ばいまたは低下する中で、
社会保険料の増加は止まらずに
可処分所得を押し下げてきました。
そして更に1989年に消費税3%が導入され、
1997年に5%への税率変更、
2014年に8%、2019年に10%に税率変更されました。
人々の可処分所得が低下する中で、
物の価値は変わらなくても消費に対して課税されることで、
実際に購入できる金額は低下していきました。
結果として大黒柱である父親の給与所得だけでは
世帯全体の支出を賄うことはできなくなります。
そして次の労働力である母親の稼ぎが必要となり、
女性の社会進出を後押しする形となり
人々の意識が変化してきたと思われます。
まとめ
女性労働者の労働力率を考えるときに、
M字カーブと言われた構造は既に崩壊していること。
前項の通り、人々の意識は大きく変化していること。
そして、少子高齢化により既に日本では
労働力不足に陥っていること。
以上を考慮すると、今後は優秀な女性労働力を
企業として如何に確保するかが大切であり、
その為には時短勤務やテレワークの推進など、
働きやすい環境を整備していくことが不可欠となります。
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