社会保険料の改定と賃上げ

社会保険料は毎年のように改定されていますが、

あまり大きなニュースにはなりません。

しかし、物価高騰による給与額の増額は

メディアもこぞって報道しています。

実際に、手取りを考えるなら

税金や社会保険料も可処分所得を

変化させる大きな要因ではないでしょうか?

社会保険は総称

2023年度の社会保険料率が

4月分から変更になります。

そもそも、社会保険とは

労災保険、健康保険、厚生年金保険、雇用保険

の4つの総称です。

これらの保険は加入条件も異なりますし、

もちろん料率も異なります。

そして、労働者の負担すべき割合と

使用者(企業)が負担すべき割合も異なります。

労災保険

労災保険は労働者全てが

加入する保険であり、

例え日雇いのお仕事であったとしても

加入しなければなりません。

保険料については

労働者の保険料負担はゼロで、

使用者が100%

負担
しなければなりません。

そして、2023年度に

料率改定は行われません

保険料率は事業の種類によって

細分化されており、

現時点で建築事業においては

1,000分の9.5(=0.95%)とされております。

健康保険

健康保険の加入については

詳細を記載すると事業規模、

収入額、雇用期間など

細かく規定されていますが、

ひとつの目安として

1週間に30時間以上働く方が

対象
となります。

そして、保険料率は

健康保険組合(企業や業界で組織する健康保険業務を行う公法人)と

協会けんぽ(国が運営してきた健康保険事業を引く次ぎ設立された公法人)

で異なります。

2023年度はこの協会けんぽの

保険料率が変更になります。

健康保険料率は都道府県によって異なり、

大阪府では10.22%が10.29%に引き上げられます

また、40歳から64歳までの方には

介護保険料として1.82%が加算されます。

保険料の負担は労働者と使用者で折半となります。

厚生年金保険

厚生年金保険の加入要件は

収入額、雇用形態、雇用期間など

細かく規定されていますが、

ひとつの目安として健康保険と同様に

1週間に30時間以上働く方が対象
となります。

そして、厚生年金保険の保険料率は

現在18.3%に固定されており、

2023年度においても変更はありません


保険料の負担は労働者と使用者で折半となります。

雇用保険

雇用保険の加入については、

ひとつの目安として

1週間に20時間以上働く方が対象
となります。

そして、保険料率については

建設の事業、農林水産・清酒製造の事業、

一般の事業で分かれております。

2023年度の保険料率は

どの事業においても0.2%

引き上げられることが決定
しおり、

一般の事業で1.35%から1.55%に、

建設の事業で1.65%から1.85%に

引き上げられます。

労働者の負担割合は2023年度の改訂後で、

一般の事業で労働者が0.6%、使用者が9.5%、

建設の事業で労働者が0.7%で使用者が11.5%

となっております。

大阪府で建設業従事の方

保険料率の改定割合を確認しても

ピンと来ないと思います。

そこで、これを実際に大阪府で

建設業に従事する41歳(介護保険料が適用される)の

事例で考えてみたいと思います。

現在、健康保険料+介護保険料の

自己負担は6.02%、

厚生年金の自己負担は9.15%、

雇用保険の自己負担は0.6%で

合計15.77%ということになります。

改訂後は社会保険料+介護保険料の

自己負担は6.055%、

厚生年金に変更は無く9.15%、

雇用保険の自己負担は0.7%で

合計15.905%となります。

従って、全体で0.135%の引き上げ

ということになります。

賃上げとの関連性

現在、政府が経団連などに求めている賃上げ要請は

インフレ率を上回る率での賃上げであり、

統計によっても異なりますが

物価上昇率は3.7%となっております。

実際に、3.7%の賃上げを実施したとしても

社会保険料率の改定によって、

賃上げが労働者の収入に

全額反映される訳ではありません

もちろん、これ以外にも所得税、住民税なども

収入に応じて徴収されるわけですからなおさらです。

まとめ

今回は数字を乱用してしまったことに

反省しながらまとめていくと、

実際に物価上昇率と同様の賃上げを実施したとしても、

社会保険料率の改定により物価上昇分を

全てカバーできる訳ではありません。

そして、賃上げは労働者の負担分が増すと

同時に使用者の納める社会保険料もアップ
します。

結果として税収アップという側面もあり、

全てが労働者に還元される訳では無く、

使用者負担分も増加すること、

価格への転嫁が難しいことから

中小零細企業では賃上げに

難色を示してる会社も多いのも事実です。

社会保険の給付について

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ゼロコスト採用コンサルタント 渡瀬 暢也

ゼロコスト採用コンサルタント 渡瀬 暢也

1972年・大阪府生まれ、日本大学経済学部卒業。
「ハローワーク活用7つの鉄則」で中小建設業の採用対策と社員が辞めない労務管理をサポートする社労士。求人営業を約10年、人材派遣を10年以上経験。2009年に職業訓練(建築CAD科)事業を立ち上げ運営も担当、ハローワーク活用の就職支援で約1,000名のCAD技術者を輩出。卒業生の短期離職で、就職支援の限界を痛感。労務管理改善を目指し社労士資格取得。中小建設業の採用難対策から労務管理を行う。建設業の採用をサポートし『20代の採用は10年以上振り』と感謝の声を頂く。若者離れの業界に採用戦略で風穴を開け、従業員の未来ある環境を真剣にサポートしている。

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