副業・兼業のブレーキ役?労働時間通算制度を考える

現在の労働基準法では、副業・兼業を行う場合、労働時間を通算する必要があります。
この通算方法には、次のようなルールがあります。

労働時間通算のルール

  1. 労働契約締結の先後の順に労働時間を通算する

  2. 所定外労働の発生順に所定外労働時間を通算する

この①②の順で労働時間を通算することが求められており、
これが結果として、勤務型の副業・兼業の促進を妨げる要因となる可能性があります。


なぜ割増賃金があるのか

そもそも、所定外労働に割増賃金が設定されている理由は、
使用者による長時間労働を抑制することにあります。

しかし、副業・兼業の場合は事情が異なります。

  • 労働者が自らの意思で副業・兼業を選択している

  • 使用者が一方的に長時間労働を強いているわけではない

この点で、割増賃金制度の本来の趣旨とは必ずしも一致しません。


それでも「通算しない」のは問題?

一方で、副業・兼業の労働時間をまったく通算しないとどうなるでしょうか。

  • 労働時間が際限なく増える

  • 長時間労働による健康障害のリスクが高まる

このため、
👉 健康確保の観点から労働時間の把握・通算は必要
という考え方自体は、一定の合理性があります。


欧州諸国の考え方

欧州諸国(フランス・ドイツ・オランダ・イギリスなど)では、次のような仕組みが採られています。

  • 実労働時間は通算する

  • 割増賃金の算定にあたっては通算しない

つまり、

  • 健康管理のために労働時間は把握する

  • しかし、副業先にまで割増賃金の負担は求めない

という考え方です。


具体例で比較してみる

前提条件

  • A社:1日8時間、時給1,500円

  • B社:1日3時間、時給2,000円

  • 月20日勤務


現行法制の場合

A社

  • 8時間 × 1,500円 × 20日
    240,000円/月

B社

  • 3時間 × 2,000円 × 割増率25% × 20日
    150,000円/月

👉 月間の通算労働時間は 220時間
👉 36協定の特別条項が必要


欧州形式の場合

A社

  • 変更なし
    240,000円/月

B社

  • 3時間 × 2,000円 × 20日
    120,000円/月

👉 通算労働時間は同じく 220時間
👉 36協定の特別条項が必要


欧州形式のメリット

欧州形式を採用した場合、

  • 特別条項の範囲内(年間6か月まで)であれば就業可能

  • それ以上の長時間労働は不可

  • 使用者の不必要な割増賃金負担を削減

  • 労働時間管理により健康にも配慮可能

といった、バランスの取れた制度設計が可能になります。


今後の動き

現在、副業・兼業における労働時間通算の在り方については、
労働政策審議会において、上記のような考え方をベースに検討が進められています。

今後の制度改正の動向にも、引き続き注目していく必要があるでしょう。

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厚生労働省「労働政策審議会」HP

ゼロコスト採用コンサルタント 渡瀬 暢也

ゼロコスト採用コンサルタント 渡瀬 暢也

1972年・大阪府生まれ、日本大学経済学部卒業。
「ハローワーク活用7つの鉄則」で中小建設業の採用対策と社員が辞めない労務管理をサポートする社労士。求人営業を約10年、人材派遣を10年以上経験。2009年に職業訓練(建築CAD科)事業を立ち上げ運営も担当、ハローワーク活用の就職支援で約1,000名のCAD技術者を輩出。卒業生の短期離職で、就職支援の限界を痛感。労務管理改善を目指し社労士資格取得。中小建設業の採用難対策から労務管理を行う。建設業の採用をサポートし『20代の採用は10年以上振り』と感謝の声を頂く。若者離れの業界に採用戦略で風穴を開け、従業員の未来ある環境を真剣にサポートしている。

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