令和8年度の中央最低賃金審議会は、今年度の地域別最低賃金改定の目安について答申を公表しました。
今年も都道府県をA・B・Cの3ランクに分け、それぞれ以下の引上げ額が示されています。
地域別最低賃金の引上げ目安
Aランク 54円
埼玉、千葉、東京、神奈川、愛知、大阪
Bランク 56円
北海道、宮城、福島、茨城、栃木、群馬、新潟、富山、石川、福井、山梨、長野、岐阜、静岡、三重、滋賀、京都、兵庫、奈良、和歌山、島根、岡山、広島、山口、徳島、香川、愛媛、福岡
Cランク 56円
青森、岩手、秋田、山形、鳥取、高知、佐賀、長崎、熊本、大分、宮崎、鹿児島、沖縄
全国平均は1,176円に
この目安どおりに最低賃金が改定された場合、全国加重平均額は1,176円となります。
前年度の全国加重平均は1,121円であったため、55円(約4.9%)の引上げとなります。
過去の引上げ額と比較すると次のとおりです。
- 令和8年度:55円(4.9%)
- 令和7年度:66円(6.3%)
- 令和6年度:51円(5.1%)
昨年度よりはやや落ち着いたものの、依然として高い水準の引上げが続いています。
答申で注目すべきポイント
今回の答申では、物価上昇への対応だけでなく、中小企業が継続的に賃上げできる環境整備についても言及されています。
特に注目したいのは価格転嫁です。
令和8年1月に施行された取適法・振興法の着実な実施が必要であることも盛り込まれており、中小企業が適正な価格で取引できる環境づくりを重視していることがうかがえます。
最低賃金だけでは賃金全体は上がらない
私は以前から、このブログでも繰り返しお伝えしていますが、最低賃金の大幅な引上げには副作用もあると考えています。
もちろん、最低賃金近辺で働くパートタイム労働者にとっては大きなメリットがあります。
しかし、日本全体の賃金を押し上げる効果は限定的です。
本当に賃金を引き上げるためには、
- 生産性の向上
- 適正な価格転嫁
- 中小企業の収益力向上
この3つが不可欠だと考えています。
日本企業の約9割は中小企業であり、そこで働く人は労働者全体の約7割を占めています。
中小企業の「稼ぐ力」が向上しなければ、日本全体の賃上げは実現できません。
実際に最低賃金の影響を受ける人はどれくらいか
令和8年5月の労働力調査を見ると、
- 正規雇用:3,745万人
- 非正規雇用:2,133万人
となっています。
さらに非正規雇用の内訳を見ると、
- パート:1,037万人
- 派遣社員:159万人
です。
最低賃金の引上げの影響を直接受けるのは、この1,037万人すべてではなく、その中でも最低賃金近辺で働く人が中心となります。
一方、派遣社員については派遣法による賃金決定の仕組みもあるため、最低賃金改定が給与へ与える影響は比較的小さいと考えられます。
「最低賃金1,500円」の議論について
報道では、一部政党などから「最低賃金を1,500円以上にすべき」という主張も聞かれます。
もちろん、賃金水準を引き上げること自体は重要です。
しかし、企業の支払能力を超えるスピードで最低賃金を引き上げれば、雇用を維持できなくなる企業も出てきます。
極端な例ですが、これまで5人雇用できていた会社が4人しか雇えなくなるような状況になれば、失業率の上昇につながる可能性もあります。
最低賃金は「高ければ高いほど良い」という単純な問題ではなく、雇用や企業経営とのバランスを考える必要があります。
まとめ
今回の答申では、昨年度よりはやや抑えられたものの、55円という大幅な引上げ目安が示されました。
今後も最低賃金の引上げは続くと考えられますが、本当の意味で賃上げを実現するためには、最低賃金だけではなく、中小企業が利益を確保できる環境づくりが欠かせません。
政府には最低賃金の改定だけでなく、生産性向上や価格転嫁の促進など、企業が継続的に賃上げできる実効性のある政策を期待したいところです。
最低賃金引上げの実態と賃上げ効果を考える
厚生労働省「令和8年度地域別最低賃金額改定の目安について」へ


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